大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所大法廷 昭和23年(れ)582号 判決 1948年11月10日

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人今井忠男の上告趣意について。

論旨(一)は、被告人が如何なる行爲によって強盗の実行行爲に加擔したかを具體的に説示していないから原判決には理由不備の違法があるというに歸するが、原判示の「共謀」というのは原判決に掲げている證據と對照すると、被告人において秋山亮一と共に強盗を行う意思の通謀のあったことをさすことが明らかであるから、被告人は秋山亮一と共同して強盗を行う意思で行爲を共にし小野春松方に侵入して「秋山亮一は携えた出刄庖丁……を右小野春松の胸元に突付けて「金を出せ」と威し同人の反抗を抑壓して同人等所有の現金約一千圓を強取したものである」ことが明瞭である。すなわち、原判示事実によれば、被告人は自己の犯意を実現するために秋山亮一と行動を共にし同人の行爲を利用したことが認められるので、被告人に對する強盗罪の共同正犯の判示としては十分であって原判決には理由不備の違法はなく論旨は理由がない。

辯護人横田隼雄の上告趣意について。

勾留状の方式について違法があれば、勾留に關する決定に對する抗告その他法律の定める手續によってこれが是正を求むべきであって、これをもって原判決を攻撃する理由とすることはできない。又論旨は、本件公訴は勾留状の請求があった日から十日を過ぎて爲されたのであるから被告人等は直ちに釋放せらるべきであったに拘らず被告人等を拘束したまゝ續行した第一審公判における共同被告人秋山亮一の供述を記載した公判調書を證據に採用した原判決は違法であると主張している。

よって記録を調べてみると、第一審の檢察官が被告人及び秋山亮一に對して横浜地方裁判所小田原支部に勾留状の発付を請求したのは昭和二二年一一月二四日であって、檢察官は同年一二月三日附で同裁判所支部宛の公判請求書を作成している。右公判請求書に押されている裁判所の受理日附印のアラビヤ數字は書き改められた形跡があって、これのみによってはその受理が一二月三日とも一二月八日とも両様に判讀されて明らかでない。しかし、記録に編綴されている横浜地方裁判所檢察廳小田原支部の被告人等に關する移監指揮書は昭和二二年一二月三日附で作成され公判を請求したから既日身柄を小田原刑務所へ移監されたいと記載されており、横浜地方裁判所小田原支部判事秋山悟は同日附でこれに同意しているし、同書面に押された看守長岡本宗治の收容者領收證印も同日附となっている。更らに又記録には辯護人今井忠男外一名から昭和二二年一二月五日附で被告人の辯護人選任屆が横浜地方裁判所小田原支部宛に提出されている。さればこれらの書面と前記公判請求書に押されている裁判所の受理日附印とを參酌して判斷すると、本件公訴は昭和二二年一二月三日に提起されたものと認めることができる。從って、被告人等の勾留は刑訴應急措置法第八條第五號に違反するものではなく、原審が所論の公判調書中の秋山亮一の供述記載を證據に採用したことは適法であって原判決には所論のような違法はない。それ故論旨は理由がない。(その他の判決理由は省略する。)

よって刑事訴訟法第四四六條に從い主文のとおり判決する。

以上は、裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 長谷川太一郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 霜山精一 裁判官 井上登 裁判官 栗山茂 裁判官 真野毅 裁判官 島 保 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 岩松三郎 裁判官 河村又介)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例